7月26日に開幕が迫る夏季五輪パリ大会を前に、なんとも“クサい”動きが広がりを見せている。
五輪開催に向け、フランス政府は約14億ドルもの予算を投じ、パリ市内を流れるセーヌ川の浄化計画を進めている。これに対抗して、一部のパリ市民たちが6月23日にセーヌ川で「脱糞フラッシュモブ」の開催を計画しているのだ。
計画は、5月末ごろからSNSなどを通じて拡散されている。きっかけは、マクロン大統領とパリのアンヌ・イダルゴ市長が、大規模な清掃活動の成果をアピールするため、6月23日の「オリンピックの日」にセーヌ川で泳ぐと表明したことだった。
発表を受けてからすぐ、XなどのSNS上ではハッシュタグ「#JeChieDansLaSeineLe23Juin」(訳:#6月23日に私はセーヌ川で糞をする)がトレンド入りし、公式ウェブサイトまで立ち上げられた。そこには、「我々を糞まみれにした以上、我々の糞を浴びるのは彼らの責任」というスローガンが添えられている。
いったい何故こんなことになったのか?すべての始まりは、2023年の年金改革と主張する声が多い。当時、マクロン大統領は議決なしで改革案を強行採択し、フランスでは定年が62歳から64歳に引き上げられた。この結果、国内各地で抗議デモが勃発し、混乱は約半年にわたって続いた。こういった経緯もあり、パリ市民はマクロン政権の動きに対して非常に敏感になっているというのだ。
五輪開催が近づくにつれ、SNS上では多くのフランス人インフルエンサーが「観光客はパリに来ないように」と警告する投稿を始めるようになっている。あるTikTokerのsantasolinaさんはこう述べた。
「マクロンが改革を強行したとき、私たちは『退職金改革がなければオリンピックもやらない』と誓った。マクロンが気にしているのはお金のことばかり。だから私たちは、彼の痛いところを突くつもりだ。私たちはオリンピックを台無しにするために組織化している」
なお、パリ五輪ではセーヌ川で開会式が行われるほか、トライアスロンやマラソンスイミングなどの競技が予定されているが、川の水質汚染は深刻だ。国際環境NGO団体「サーフライダー財団・ヨーロッパ」の報告によると、川の水を分析したところ、100mlあたりの大腸菌の数が3430、腸球菌は508という結果が出たという。これは、日本の道頓堀川の約6倍以上の数値に相当するというデータもある。
こうした事情や、船が通行することもあり、セーヌ川では1923年から100年以上にわたり遊泳が禁止されている。フランス政府によれば、五輪開催までに細菌汚染の75%が除去されると期待されており、2025年にはセーヌ川での遊泳解禁を目指しているという。
果たして、6月23日に我々はどのような光景を目の当たりにするのだろうか。クソまみれの川を泳ぐ現職大統領と、それに向かって脱糞するパリ市民。前代未聞の事態であるだけに、見たくないと言えば嘘になるが、長きにわたり花の都として知られたパリは、糞の都として印象づけられてしまうのだろうか…,