「退職する際に同僚からメッセージの寄せ書きをもらえなかった」として、かつての職場を訴えた女性が、法廷で衝撃の真実を知ることとなった。
英紙「ガーディアン」などの報道によると、英国在住のカレン・コナハンさんは、2019年から2021年まで勤務したインターナショナル・エアラインズ・グループ(以下IAG)に対し「自分の存在を無視した」として、平等法違反で提訴したという。
英国で定められている平等法は、年齢、障害、性適合、婚姻・市民的パートナーシップ(同性婚)、人種、宗教・信条、性別、性的指向など、9つの保護特性を理由とした差別を禁じている。
しかし、コナハンさんの元同僚は法廷で「寄せ書き用のカードは購入したものの、メッセージを書いてくれた者が3名しかいなかったため、彼女に渡さなかった」と証言。判事も「(元同僚は)寄せ書きを渡した方が、むしろ彼女を侮辱することになると考えた」と明らかにしている。
コナハンさんは、これ以外にもセクハラや不当解雇など計40件の申し立てを行っていたが、裁判所はそれらすべてを棄却。理由として「そもそも事実が存在しないか、もし存在したとしても通常の雇用過程における無害なやり取りの範囲内である」と述べた。また、判事はコナハンさんが「陰謀論的思考」に陥っていると指摘し、「職場での通常のやり取り」をハラスメントと誤認していたと付け加えている。その一例として、コナハンさんが同僚の名刺に書いたスラングのような言葉遣いを、別の同僚が違ったスペルで使用した際「私をパクった」と詰め寄ったエピソードなどが明かされた。
なお、同僚たちの証言によると、IAGの従業員はオフィスのあるロンドン・ヒースロー空港から2時間圏内に居住することを求められていたが、コナハンさんは2021年に空港から約370km離れたノースヨークシャー州に転居。そのため、組織再編の一環として整理解雇されたとのことだ。
近年、ハラスメントに対する世間の目はいっそう厳しくなっており、それらを是正するための取り組みが世界中で行われている。しかし、ハラスメントを自分に都合よく解釈し、利用する者が存在するのもまた事実。SNSなどで被害を訴えて大きな話題になったものの、フタを開けてみれば“被害者”とされた側にも問題があったという話は、枚挙にいとまがない。
言うまでもなく、どんな形であれハラスメントは許されないことだ。しかし、一方的な話には必ず裏があるということを、受け手も見極めることが肝要である。